真夏の昼下がり、茶屋の軒先の腰掛に腰をおろす。
うだるような暑さがのしかかっている。
呼吸をするだけで汗が流れる。
炭火で餅を焼く匂いが微かに漂っている。
ちょっとだけ味わえればいいから二人で一皿だけ注文する。
待っている間にも汗がしたたり落ちる。
風鈴がほんの少しだけささやいてまたすぐに黙りこくる。
しばらくして注文したあぶり餅が運ばれてくる。
小指の先ほどの大きさの餅が竹串の先に丸めてある。
手渡してもらった一本をそっと口に入れる。
焼いた餅の香ばしさと白味噌のたれが絶妙な一品だ。
兼ね備えた素朴さと上品さは時代の流れの中でも変わることを拒んだのだろう。
満足してお番茶をすすり、それから汗を拭いた。
暑い夏、これはこれでいいのだと感じた。
(8月9日)