年に数回だけ彼女は僕の仕事の手伝いをしてくれる。
自分の仕事が休みで、僕が必要としているタイミングの時だ。
まさにボランティアだ。
彼女は視覚障害者ガイドヘルパーという資格も持っている。
だからサポート技術は高くて僕も歩きやすい。
何よりも僕が静かに歩くのが好きということをよく知っていて、
歩いている時には彼女からはめったに話しかけてこない。
危険な場所などで注意を喚起したり立ち止まった時に理由を教えてくれるくらいで、
それ以外はほとんど無言で歩いている。
黙々と歩いている。
まさに目だけを借りて歩いているという感じだ。
今回も久しぶりのボランティアをお願いし地元の駅に帰り着いた。
バス停に向かう歩道橋を歩きながら、珍しく彼女は僕に話しかけた。
いや小さな声だったから独り言だったのかもしれない。
「ラムネ色の空です。」
突然の情報に僕の足は止まった。
僕はしみじみと空を眺めたがラムネ色の空を想像は出来なかった。
でもきっと美しい空なんだろうと思ったら、
想像はできないのに何故かとてもうれしくなった。
見えなくても判らなくても伝わるものもあるのだ。
(2016年7月30日)