同じ町内に住む友人からのメールに気づいたのは朝だった。
夜遅かったので電話で伝えたいという気持ちを抑えてメールを選んだと書いてあった。
「小畑川の上をゆっくり静かに小さな可愛らしい黄緑色の光が動いていました。
ゆらゆら移動しながらついたり消えたりを繰り返していました。」
近くの川で3匹のホタルを見つけたらしい。
小さな光の描写はまるで僕の脳に映像を送り届けているようだった。
僕は朝の静けさの中でホタルの光を思い出していた。
遠い遠い過去の微かな光だった。
もうそれは黄緑色だったかさえも記憶はさだかではない。
見えなくなって20年近い時間が流れてしまった。
慣れたと言えばそうなのかもしれないし、
いつまでたっても見たいと思う僕もいる。
見えないことはうれしいことではない。
残念なことなのかもしれない。
でも、届けられた描写で人はこんなにも豊かな気持ちになれるのも事実だ。
ホタルが暮らす街で僕も生きているんだ。
梅雨空には似合わない爽やかな朝が始まった。
(2016年6月8日)