新鮮なキビナゴのお刺身を酢味噌につけて口に運ぶ。
銀色に光りながら泳ぐキビナゴの姿を思い出す。
少年時代が蘇る。
人差し指ほどの流線型の小さな魚が群れを作って泳ぐ姿を美しいと感じた。
キラキラ輝いていた。
あれは故郷の海で見た映像だったのだろうか。
こうして蘇る映像の記憶には美しい自然の姿が多くある。
人間は無意識に美しいものを記憶していくのかもしれない。
食べるという行為からでもその映像の記憶に結びつくのだから五感のつながりは不思
議だ。
見えなくなってもう20年にもなるのに、
道端の美しい花を教えてもらったりしたらつい触りたくなる。
これもそういうことなのかもしれない。
「貴美女児」
きっと当て字だろう。
誰が考え付いたのかは知らないけれど、
この漢字さえも美しいなとあらためて思った。
(2016年5月31日)