駅前の街路樹にアルプス乙女の可憐な花が残っていた。
京都ではもう散ってしまったツツジが満開だった。
海を渡ってきた風を感じながら街を歩いた。
鹿児島県阿久根市で生まれ育った僕は、
海の匂いを感じるだけで幸せになれるのだ。
カキ屋のおにいさんがカキの話をしてくれた。
ところどころ判りにくい発音もあったけれど、
何かぬくもりを持った津軽弁が心地よかった。
何人かコミュニケーションをとった人達が見事に飾らない素朴なやさしさを持ち合わ
せておられるのには驚いた。
目が見えている頃に数回訪れたことがあるのだけれど、
映像の記憶は残っていない。
かろうじて列車から青函連絡船に乗り換えるあたりを漠然と記憶しているくらいだ。
最後に訪れてから30年の時間が流れた。
随分生きてきたんだなとしみじみと思った。
生きてこれたということはそれだけで幸せなことなのかもしれない。
いつか仕事を辞めたら、
青春時代のように日本中を旅してみたいなぁ。
あの頃のようにバックパッキングで寝袋を持って、
そうそう白杖も忘れないようにしなくちゃ。
(2016年5月23日)