いつもと同じように話をしたはずだった。
話しの量も内容もいつもと同じくらいだった。
いつもと違うことがあるとすれば、
聞いてくださるのが現役のヘルパーさん達がほとんどということくらいだった。
講演の最後、人間の命の価値、幸せの意味などに関わる話になった頃には、
会場の空気は凛として佇んでいた。
真剣な視線が僕を見つめていた。
いや僕の心までをつらぬいていた。
その視線を感じながら講演をしている僕の方が気持ちが洗われるような感じだった。
不思議な感じだった。
寝たきりの人、認知症の人、障害を持った人、
ヘルパーさん達は日々その人達と向かい合っておられる。
職業として携わっておられる。
きっといつも真剣勝負なのだろう。
人間の命の重たさを事実として感じておられるのだろう。
一人一人のやさしさがこの仕事の根底を司っているのは間違いない。
父や母の介護の時もそう感じたけれど、
僕はこの仕事に携わっておられる人たちを
心から尊敬しています。
(2016年5月19日)