寝ぼけまなこでバスを待っていた。
ふと頬が感じた。
それをスタートに耳も手も頭も感じた。
朝の爽やかな風だった。
風は僕の頭を撫でたり頬をつついたり耳たぶをつまんだりした。
僕の周囲をくるくると回りダンスを披露し、
時には地面にはいつくばったり寝転んだりもしていた。
悪戯っぽく僕を見つめフフッと笑った。
ひとしきり僕と遊ぶと駆け足で去っていった。
スカートのすそをひるがえしながら駆けていった。
女の子の風だったんだな。
新緑の中で生まれたに違いない。
そんなことを考えてちょっとうれしい気分になった。
目が見えて車の運転ができれば、
こんな出会いはきっとない。
決してなにもかもがプラス思考ではないけれど、
日々の暮らしの中ではそれなりにいいこともあるよね。
(2016年5月18日)