目が見えている頃から移動手段は列車を一番に考えていた。
時刻表とにらめっこするのも楽しかったし、
気が向いたらブラリと旅に出るのも好きだった。
鉄道マニアほどではなかったけれど、
とにかくよく列車に乗った。
国内の移動は基本は鉄道と決めていた。
怖がりというのもあったけれど、
飛行機は早いだけで途中下車もできないというのも大きな理由だったと思う。
それでも乗らなければいけない状況の時は、
車窓から見える雲や空、持ち込んだ週刊誌に目をやることで時間を過ごしていたよう
な気がする。
怖いという気持ちをごまかす方法だったのかもしれない。
見えなくなってからはそのささやかな気分転換もできなくなった。
エンジン音、気圧の変化、振動・・・。
ただひたすらそれとのお付き合いだ。
おまけに毎回、避難の際のジャケットの着方、降りてくる酸素マスクの装着の方法、
非常口の場所なども説明されている。
見えない僕にはどれも対応できそうにない。
しかも脱出の際は白杖は使えないと、
親切なキャビンアテンダントがわざわざ教えてくださった。
万が一の時は皆同じだと思ったり、安全度は最高の乗り物だと自分に言い聞かせたり
している。
あまり乗りたくない飛行機に今月はあと4回も乗る予定だ。
スケジュール上仕方ないのだ。
こうならないためにどうスケジュールを組み立てるか、
そうだ!帰りの飛行機の中で研究することにしよう。
(2016年5月8日)