地域の視覚障害の仲間達と桜まつりに参加した。
まつりの会場では毎年点字と手引きの体験コーナーが企画されるのだ。
小学生から一般市民までいろいろな人達が体験してくださる。
ボランティアさんの指導で点字で氏名を書いた子供が緊張しながら僕の前に並ぶ。
その文字を僕の指が辿り読んでいく姿で、
子供達は点字が文字であることを実感するのだ。
隣では初めての体験という女性が、
視覚障害の仲間を実際に手引きして会場を歩いてうれしそうに帰ってきた。
あちこちで初めての体験に驚きや喜びの声が聞こえてくる。
とても地味な活動だけれどもコツコツと続けていくことに大きな意味があるのだろう。
実際僕達に声をかけてくださる人の数は確実に増えている。
こういう活動の結果なのだろう。
たまたま通りかかった女性が「松永先生!」と近寄ってきた。
専門学校の教え子だった。
二人の子供のママになっていた。
ママは子供を僕の前に連れてきて僕と握手をさせた。
卒業してもう何年もなるのに、
僕が伝えたかったことをしっかりと受け止めてくれていたのだろう。
何よりも暖かなメッセージに感じられた。
手引き体験で一緒に歩いた中学生は、
以前僕の講演を聞いてくれていた生徒だった。
僕と一緒に歩くことで何かを伝えようとしてくれていたのかもしれない。
この街で暮らし始めて30年の時間が流れた。
最初の10年は見えていた。
小畑川沿いの桜並木の美しさははっきりと記憶にある。
桜を目で確認することはできなくなったのに、
毎年満開を待っている僕がいる。
桜に集う人達の一人であることがうれしいのかもしれない。
集えれば、やさしい人に出会える。
やさしい人に出会えればうれしくなる。
(2016年4月2日)