大学の職員研修の仕事で精華大学を訪れた。
40年ぶりのキャンパスだった。
青春時代の苦い思い出の場所だ。
やさしい人でありたいと願いながらもやさしい人にはなれなかった。
実際はやさしい人を傷つけてしまったのだろう。
生きていく意味や価値などに気づくようになったのは、
ひょっとしたらつい最近のことなのかもしれない。
いや本当はまだまだ判っていないのかもしれない。
とにかく二十歳前後の頃は今よりもずっとずっと判っていなかった。
ただすべての経験が今の僕につながっているとしたら、
苦い思い出さえも有難いことなのだろう。
そんなことを考えながら学校を出た。
運転してくれていた同僚に車窓の風景を尋ねたら、
40年前と同じようにそこに比叡山があった。
比叡山のなだらかな稜線までが鮮やかに蘇った。
やさしい人が大好きだと言っていた風景が記憶のアルバムに残っていたのだ。
挫折や失敗の中にありながらも豊かな時間だったのだろう。
(2016年3月28日)