寒くもない暑くもない早春の昼下がり、
久しぶりに清水寺を訪れた。
東山区が主催したユニバーサルツーリズムに参加したからだ。
いろいろな立場の人達が東山に観光に来られた時どう対応するのかという勉強会だ。
昨年は車いすの方、一昨年は外国の方、今年は視覚に障害のある方へのおもてなしが
テーマだった。
行政だけで進めるのではなく企画から学生達が若い感性で関わっていて、
その柔らかさと真摯な姿勢が講座全体にいい刺激になっていた。
参加者も定員を超える盛況ぶりで心地よかった。
僕はいつものように見えない世界を伝え、共に生きていく社会の実現をお願いした。
そして実際のサポートの方法も実習してもらった。
皆さん熱心に体験されていた。
参加者の中には東山区長もおられてこれまた熱心に体験されておられたのには驚いた。
それから皆で清水寺まで出かけた。
参道は大賑わいだった。
半分以上が外国からの観光客だった。
受講生のお一人の陶器屋のおかみさんらしい人が僕のサポートをしてくださたのだが、
何の違和感もなく、まるで昔からの知り合いと観光にきているような感じだった。
学ぶ機会というのは勿論大切なことなのだが、
きっと元々のセンスもある人だったのだろう。
聞こえてきた風鈴の音色から話しがつながって、
外国からの観光客がどんな陶器に興味をもたれるかなど、
内輪話も聞けて楽しかった。
僕はそれだけで満足していたのだが、
清水寺の正門に近づいた時、
「門の横に濃い赤色の梅が咲いていてきれいですよ。」
彼女がさりげなく教えてくださった時には
何か胸がジーンとした。
初めて出会った日に、人間同士ってとても素敵なことをしてしまうのだ。
こんな豊かな時間、日本中のいや世界中の視覚障害者に分けてあげたいと思った。
いつか白杖や盲導犬の人がたくさん行き交う観光地になればいいな。
(2016年3月9日)