滋賀県湖南市の中学校を訪れた。
僕はいつものように生徒達と向かい合った。
白杖の人を見かけたことがあるか生徒達に質問してみると、
見かけたことのある生徒はとても少なかった。
京都市内の中学校の生徒達に質問すれば、
ほとんどの生徒が見かけたことがあると答える。
あちこちの実情を知るようになって京都市が特別な感じということが判ってきた。
地方では白杖はまだまだ珍しいのだ。
地方で障害を持つ人が少ないわけではない。
どれだけ社会参加ができているかということになるのだろう。
出会う機会が少ないと当然人間同士として触れ合う機会は少なくなる。
触れ合う機会が少ないと学ぶ機会も少なくなる。
学ぶ機会がないとなかなかサポートの声はかけられない。
そうすれば障害を持った人達は出にくくなる。
悪循環ということだろう。
ただ、生徒達の柔らかな感性はどこで暮らしていても変わらない。
それは講演会場の空気が教えてくれる。
だからこそこうして生徒達に出会うということはとても意味がある。
「この街の未来を創るのは君達だよ。」
僕はメッセージを投げかけて講演をしめくくった。
帰りの電車の中で頂いたゴディバのチョコレートをゆっくりと噛みしめた。
ホワイトチョコレートの芳醇な味わいが口の中で溶けていった。
ふと学校から眺めた鈴鹿山脈の雪を思い出した。
3年前に出会った先生が、
次の一歩のために今回また僕を招いてくださった。
雪が溶けたら春が生まれる。
人間同士のぬくもりはきっと時代の冬も溶かしていくのだろう。
いつかこの街も白杖の人が当たり前に見られるようになるのだ。
春、待ち遠しいな。
(2016年2月16日)