朝、いつものように家を出た。
団地のエレベーターに乗り1階まで移動した。
それから自転車置き場の壁を探して、それを手がかりに歩道へ出た。
バス停を目指して歩き始めた。
すべてがいつものように動いていたのに、
歩き始めたら僕の心だけがどんどん変化していった。
僕はバスに乗るのをやめてわざと歩くことにした。
いつもなら時間の節約に、そして安全のためにという理由でバスを選択するのだが、
今朝の僕はそれを放棄した。
どうしても歩き続けたくなっていた。
ただ安全は大切なのでわざと一度立ち止まって背筋を伸ばした。
そして耳に気合を入れて、意識をしっかりと前に向けた。
歩くスピードは緩やかにした。
準備万端となって再度歩き出した。
まだちょっと冷たい空気の中でやさしい光が僕を包んだ。
ぬくもりのある光だった。
見えなくてもその光は感じられた。
冬は風の当たらないような陽だまりにそっとあったのだが、
今朝はそれが空から降り注いでいた。
団地を出てほんの少し歩いたところで僕はそれに気づいた。
気づいたらもっとその中にいたいと思った。
だから歩くことにした。
歩き続けても僕はやっぱり予想通り、光の中にいた。
春がきたんだ!
僕はうれしくなった。
(2016年2月3日)