昨年も伺った中学校、
今年も人権月間の12月にお招きいただいた。
300名余りの1年生に話をした。
テーマは「見えない世界で生きること」、
見える人も見えない人も見えにくい人も、
皆が笑顔で参加できる社会になるように、
いや、その未来を創るのは君達ですよと生徒達に語りかけた。
毎年行く学校でも生徒達は毎年違う。
僕が直接メッセージを伝えられるのはいわばワンチャンスなのだ。
それが判っているから自然に力が入る。
一人でも多くの生徒達に伝わるように、
しっかりと前を向いて言葉に心を込めて思いを伝える。
でも、実際どれだけの生徒に届けることができたのかは判らない。
確認する術もない。
ひょっとしたら砂漠に向かってジョーロで水やりをしている滑稽なおじさんなのかも
しれない。
講演が終わり体育館を出た時、一人の男子生徒が駆け寄ってきた。
「松永さん、こんにちは。」
1年生はまだ体育館にいるはずだから、
「2年生?」と尋ねてみた。
「そうです。時々ホームページ見てますよ。」
彼はそれだけ言って笑った。
僕は胸ポケットからありがとうカードを出して彼に手渡した。
そして握手して別れた。
ほんの数十秒のことだった。
一部始終を見ていたガイドさんが教えてくれた。
「さっき駆け寄ってきた男子中学生、目がキラキラ輝いていましたよ。」
例えたった一人でもメッセージを受け止めてくれている生徒がいるなら、
それは確実に未来につながっていく。
いつか砂漠に小さな花が咲いてくれるのだ。
キラキラした眼差しを見てみたいなと思いながら学校を後にした。
(2015年12月12日)