サポーターは手際よく傘を閉じると
僕を手引きしながら、
「乗ります。」と声を出してバスに乗り込んだ。
四条烏丸からの夕方のバスは当然込んでいた。
サポーターは僕の手を入口の近くの手すりに誘導した。
サポーターの片方の手には荷物と傘が握られていたはずだ。
僕が手すりを握るのと同時くらいに男性の声がした。
「どうぞ座ってください。」
そんなに若い声ではなかった。
僕はありがとうございますと言いながら席に座った。
今度は僕の横のお客さんがサポーターの女性に声をかけた。
「私ももうすぐ降りるから座りなさい。」
まだ若いサポーターは、
「私は大丈夫ですから座っていてください。」
笑顔で答えているのが僕にも判った。
目的地に着いてバスを降りた時、
「さっきの方は何歳くらいだったの?」
僕はサポーターに尋ねた。
「席を譲ってくださった人も、次に譲ろうとしてくださった人も、
どちらも70歳前後くらいの方でした。
カッコ良かったですね。」
僕もそう感じていた。
生き方を持っているということは、
年齢には関係なく素敵なことなのだろう。
そして僕もそんな風に年をとっていきたいと思った。
(2015年11月19日)