目が見えなくなった時、
僕はもう何もできなくなるのではないかという不安に戦いた。
苦しさ、悲しさ、辛さ、怒り、様々な感情が渦巻いていたのかもしれない。
いら立っていたような気もする。
それを乗り越えるような強靭な精神も持ち合わせてはいなかったし、
ただ逃れられない運命みたいなものと向き合っていたような気がする。
いつなのかどれくらい時間がたった頃なのか、それさえ判ってはいないのだけれど、
気がつくとなんとなくあきらめられた自分がいた。
あきらめるというのは人間の持っている力のひとつなのかもしれない。
あきらめてから15年以上の時間が流れた。
今夜、僕はこれを東新宿のホテルの一室で書いている。
京都から一人で来て四日間の研修に参加している。
目が見えている頃と同じように、いやそれ以上に行動範囲は広くなった。
今日の研修を終えて、夕食をとりながら歩行訓練士の仲間達と未来を語り合った。
僕がこうして白杖で歩けるようになったのは歩行訓練士のお蔭だ。
見える人も見えない人も見えにくい人も、
皆が笑顔で歩ける国になったらいいな。
今僕がこうしているのはたくさんの支援があったからだと実感した。
そしてあらためて感謝した。
(2015年9月28日)