光を感じることのできない僕は、
毎朝ベッドの横に置いてある音声時計で朝を確認する。
もう慣れているのでその行動に特別な違和感もない。
たまに手探りの方向がずれていてうまく時計をキャッチできなくていらつくこともあ
るのだけれど、狭い範囲での捜索だからじきに見つかる。
時々朝かと思って時計のボタンを押して、
音声が夜中を教えてくれたりしたらちょっと損をしたような感じでもう一度寝る。
今日は夜中に二度も起きてしまった。
しかも二度目は朝と確信しながら時計を探した。
なかなか見つからず、やっと探し当てた時はすっかり目覚めている感じだった。
ボタンを押したら、
「午前4時55分です。」と聞こえた。
僕は聞き間違ったかと再度ボタンを押したが間違ってはいなかった。
もう一度寝たら中途半端な眠りになってしまいそうなのであきらめた。
ちょっとがっかりしながら、いつものようにラジオをつけた。
見えている頃は朝新聞を読む習慣があったのだけれど、
見えなくなってからは毎朝ラジオを聞くようになった。
ラジオをつけっぱなしで動き始める。
カーテンを開け窓を開けて空気を入れ替える。
無意識に深く呼吸する。
小鳥達の朝の挨拶が聞こえないか耳を澄ます。
トイレや洗面をすませたら必ずコーヒーを飲む。
最近知人からプレゼントしてもらったスティックのコーヒーがお湯を注ぐだけという
手軽さでとってもおいしいので気に入っている。
今朝もそのコーヒーを飲みながらラジオに耳を傾けたら天気予報の時間だった。
「今日の降水率は0%、今空を見ても雲を見つけるのが大変なくらいの青い空が広が
っています。」
天気予報士のおじさんの声が流れた。
その声もちょっとうれしそうだった。
僕はさきほと開けた窓から空を眺めた。
早起きは三文の得、
ちょっと納得の朝になった。
(2015年9月14日)