小学校での福祉授業、100人近い子供達が僕の前に座った。
僕はいつものように、
視覚障害ってどんな状態なのか、
何故なるのか、どういうことに困るのか、
どんな風に手伝って欲しいのか、
順序を考え整理しながら話をした。
一生懸命話をした。
そして障害がそのまま不幸に結びつくものではないことも伝え、
助け合える人間の社会の素晴らしさなども付け加えた。
最後に子供達の質問を受け付けた。
「もし目が見えるようになったら何を見たいですか?」
一人の少女が僕に尋ねた。
僕は日常、バス停などで無意識に空を眺めているという話をして、
空を見たいのかもしれないと答えた。
それから、知人に聞いた話をした。
「あのね。何を見たいですかと尋ねる時、尋ねる人の心の中には
見せてあげたいという気持ちがあるらしいよ。
見せてあげたいと思うからそういう質問になるそうだよ。
ありがとう、うれしいね。
だから、そう思ってくれたやさしい君の顔を見てみたいね。」
授業が終わって帰る間際、少女が僕に声をかけてくれた。
少女は自分の氏名を名乗ってから、
「私の顔を見てみたいと言ってくださって、とってもうれしかったです。ありがとう
ございました。」
それだけを僕に伝えた。
僕達は握手をした。
握手をしたまま、お互いを見つめた。
そして、微笑んだ。
(2015年9月9日)