楽しい食事の時間だった。
それぞれの場所でそれぞれの人生を歩いてきた僕達は、
たまたまの縁で一緒に食事をした。
生きるということにつながるような深い話から、
ネイルアートの爪に描かれたあどけない幸せの話まで、
話題はつきなかった。
笑顔での食事は一層おいしく感じられた。
店を出てフラフラと八坂神社の方へ向かった。
食後の散歩ついでに夜の静かな境内を抜けて四条通りへ出るつもりだった。
境内の入口付近からごった返していた。
人波にのまれるように僕達は境内に吸い込まれた。
祇園祭の神輿洗いの神事の日だったのだ。
夜の境内をたいまつの火や担ぎ手の掛け声が動き回った。
熱気の中に僕達は立ちすくんだ。
何百年も前から繰り返されてきたこのお祭りが圧倒的な存在感で空気を支配した。
何百年か先にまたこのメンバーで食事してみたいな。
その時は皆の顔を見れたらいいな。
僕は空を見上げて一人微笑んだ。
(2015年7月11日)