仕事帰りの電車の中、
ボランティアさんは夕暮れの空をピンク色と表現した。
僕は空のある方を見上げた。
頭の中一杯にピンク色が広がった。
平穏でやさしい気持ちになった。
もう見ることはないということは理解している。
もう見ることのない人生を特別に悲観したりすることもないし、
かと言って、障害を乗り越えたなんて自覚もない。
ただ仕方ない、どうしようもないとだけ思っている。
その気持ちとなんとか付き合えるようになったのだろう。
そして日常の何でもない場面で、
ふと前後の脈絡もなく思い出す色や風景。
それは願いの裏返しなのだろうか。
子供の頃、手に入れられないものを思う時、
そこには寂しさや口惜しさがあったのに、
今はそれはない。
それどころか、
思い出した瞬間さえ愛おしいと感じる。
見ることはなくても、
いつまでも思い出せる自分でありたい。
そんな人生でありたい。
(2015年5月21日)