ニュースで報じているように外国からの観光客が増加しているようだ。
毎日たくさんの外国人と遭遇する。
時々周囲がすべて外国語になってしまうこともよくあるようになった。
今日も地下鉄の階段を降りはじめた僕の後ろに、
にぎやかな中国のおばちゃん達が近づいてきた。
僕は自然にスピードをあげて動こうとした。
前方の人に白杖が当たった。
いつものように「すみません」と謝る僕に、
返ってきた言葉はスペイン語らしき言葉だった。
外国人に挟まれるような感じでゆっくり歩いたが、
また白杖が前方の人に当たった。
「すみません」に返ってきた言葉はやっぱりさきほどと同じ外国語だった。
もちろん意味は判らなかった。
困ったなと固まった瞬間、
「ゆっくりと一歩だけ降りてください。」
右後方からの若い男性の声だった。
「ありがとうございます。」
僕は一歩降りた。
「また一歩だけ降りてください。」
彼は僕と前方との距離を測りながら一歩ずつ誘導してくれた。
最後の段を降り切った時、
「終りました。もう大丈夫です。」
彼はその言葉だけを残して雑踏に消えた。
後ろから追いかけてきた中国のおばちゃん達の大きな話し声と笑い声に包まれて、
僕は彼がどちらに動いたのかさえ判らなくなっていた。
僕は心の中でありがとうございますとつぶやいた。
日本語っていいなと感じてしまった。
異国から脱出したような気分になっていた。
外国語が判らないからではありません。
やっぱり日本語っていい感じです。
(2015年4月16日)