友人達と東山にある料理屋「阿吽坊」で食事をした。
いつものように身も心も満足してごちそうさまをした。
それから、大将とおかみさん、馴染みのスタッフに見送られて、
玄関からお店の入口に続く飛び石の道を歩き始めた。
突然、おかみさんの僕を呼ぶ声がした。
「今顔に当たったのが萩ですよ。今年の花は早くて、もう終わりかけです。」
おかみさんはただ見送るだけでなく、
空中に飛び出した萩が僕の顔に当たる瞬間までを見ていてくださったのだ。
僕はうれしくなって、立ち止まって萩を触った。
「白いさざんかも咲いています。寒椿の赤い花も・・・。
今年は秋が終わるのが早そうですね。」
おかみさんの言葉が続いた。
静けさと一緒に、秋の夜の落ち着いた風景がそっと僕に寄り添った。
お店の出入り口に着いて、おやすみなさいを言いながら格子戸をを閉めた。
さりげない何気ない一言、
多過ぎることもなく、適度な量と高品質の情報、
僕を豊かな気持ちにしてくれる。
このセンスのおかみさん達がいる料理屋さん、
満足して当たり前だと妙に納得して店をあとにした。
(2014年11月16日)