鹿児島講演の最終日、新幹線の出発するまでの2時間あまり、
同級生達は僕の大好きな東シナ海の波の音を聴きに車を走らせてくれた。
晴天の秋空の下に、40年前と同じ海があった。
何も変わらない海があった。
波音を聴きながら手作りのお弁当を食べた。
幸福感が僕を支配した。
砂浜を散策していた同級生が、
桜貝の貝殻を僕の手のひらに載せてくれた。
そっと触るとピンク色が指先で微笑んだ。
なにもかもを放り出してここで暮らせたらと、
現実味のない妄想が潮風に吹かれた。
明日からまた、空きのないスケジュールが続く。
僕はきっとひとつひとつに真剣に取り組むのだろう。
それが生きているということなのかもしれない。
でも来年は休日を確保して帰ってこよう。
そして砂浜で昼寝をするんだ。
まどろんで目を覚ましたら、
奇蹟が起こって海が見えたりしてね。
(2014年10月17日)