朝のラジオのニュースは緊張感に包まれていた。
台風は大きな勢力を保ったまま九州から本州に向かっている、
JR西日本は午後の電車をすべてストップする、
その他の地域の在来線も運休決定が続出、
新幹線にも変更や運休があるかもしれない。
僕は不安の中で迷った。
翌日から鹿児島県の子供達への福祉授業が予定されているのだ。
どこまで交通機関が機能してくれるのか、
もし移動の途中で動かなくなったらどうしよう。
いろいろな場面を想像しながら迷った。
それはきっと、突然の状況の変化にはとても弱い視覚障害の特性もあるからだろう。
そして、ギリギリのタイミングで行くことを決めた。
決めた理由は、なんとかなるだろうという根拠のないいい加減な気持ちだったかもし
れない。
困ったら、周囲の人にお願いすれば誰かが助けてくださるだろう。
まさに希望だ。
タクシーで駅に向かった。
運転手さんから、こんな日にどこに出かけるのですかと尋ねられたけれど、
なんとなく九州とは言えなかった。
地元の駅に着いて切符を購入して、新大阪駅での乗り換えのサポートを依頼した。
駅員さんからも、途中で止まる可能性がありますと説明を受けた。
覚悟していますと答えたら、気をつけて行ってらっしゃいと言ってくださった。
僕は笑顔で、行ってきますと答えた。
新幹線の中では何度も台風による運行状況のアナウンスがあり、
在来線はほとんど動いていないのが判った。
それでも、僕の乗車した新幹線は予定通りに動いた。
ただただ新幹線という乗り物の技術力の高さに感動した。
熊本を過ぎたあたりでワゴンサービスのホットコーヒーを頼んだ。
コーヒーの香りが心にまで浸みこんだ。
明日からの4日間、故郷の子供達にしっかりとメッセージを届けたい。
(2014年10月13日)