かねたたき

琵琶湖のほとりで暮らす友人が、
かねたたきの鳴き声を録音して届けてくれた。
秋の虫合唱団にこんなメンバーがいたのは知らなかった。
58年という年齢を重ねてきたのに、
知らないことが多すぎることを実感する。
ただ若い頃は、それを恥ずかしく感じたり悔しく思ったりしたものだが、
最近はそれはなくなった。
むしろ、新しい学びを素直にうれしく感じるし、
教えてくださる人とのやりとりを光栄に思うようになった。
かねたたきの鳴き声に耳を凝らしながら、
昔見た琵琶湖の風景が蘇る。
人間同士の交わりの中で、幸福感は芽生えていくのだろう。
失明と向かい合った時、幸福が遠くにいってしまうような錯覚に陥った。
今思えば、やっぱりそれは錯覚だったのだ。
見えるのと見えないのと比べれば、
見えた方がいい。
でも、それと幸福感は関係はないようだ。
こうして、かねたたきの鳴き声を聞いて幸せになれるのだから、
人間って素晴らしい。
(2014年9月24日)