京都駅西改札口、点字ブロックの先にある有人改札口は込んでいるようだった。
僕は雰囲気を手掛かりに動こうとした。
その時、「sorry」という女性の声がして、
それから「sorry」という男性の声も続いた。
二人は、僕の前を通り過ぎながら、再度sorryを繰り返した。
僕は突然だったので、
sorryと返した。
何と返せばいいのか、以前誰かに教わったような気もするのだが完全に忘れていた。
無言よりもましだと自分を慰めながら、
点字ブロックを頼りに、待ち合わせの八条口新幹線改札口に向かった。
記憶の地図だけで動いていたので案の定迷子になった。
点字ブロックの上で首を傾げていたら、これまた英語での女性の声。
意味はまったく理解できなかったのだけど、
困っている僕を助けようとしてくれているのは判るのだから、
人間同士のコミュニケーションって凄いと思う。
「sinkansen entrance Please!」
文も発音もでたらめの英語らしきものが
僕の口からこぼれた。
彼女はオーケーと言いながら、やさしく僕を引っ張った。
そして、新幹線改札口に着いた。
なんとか伝わったらしい。
「Thank you card Please!」
僕は胸ポケットからありがとうカードを取り出して、彼女に手渡した。
「ありがとう」と言いながら受け取ってくれた彼女は笑顔だった。
彼女にバイバイと手を振りながら、
中学校時代にもっと真面目に英語を勉強すればよかったと、
深く深く反省した。
それにしても京都駅、
日本人の方が多いはずなんだけどなぁ。
(2014年8月30日)