土用の丑の日、
たまたま立ち寄った牛丼屋さんに「ウナ丼」というメニューがあったので、
牛丼よりはだいぶ高かったけれど、
奮発して頂くことにした。
迷ったのだけれど、
それでも、ウナギが二切れのを注文する勇気はなくて、
一切れので我慢した。
我ながら、可愛い小市民だ。
香ばしい香り、ふんわりとした独特の食感、
笑顔になってパクパク食べた。
味覚も胃袋も満足して、
十分幸せな時間となった。
食べ終わってお茶を飲みながら、
少年時代、親父とウナギ釣りに出かけたことを思い出した。
高松川が海につながるあたり、
夜の港に腰を下ろして、
豊かな時間だった。
あのヌルヌルを手が記憶している。
釣り上げたウナギを、親父が上手に掴むのを、
自然に尊敬した。
持ち帰ったウナギは、
まな板で頭部をクギでさされて、
親父の包丁の餌食になった。
それから七輪の火で焼かれて、そして食卓に上った。
とってもおいしかったのは憶えているのに、ウナギの顔は思い出せない。
ドジョウの顔は憶えているのに、
ウナギは思い出せない。
申し訳ないという思いは、
記憶を調整してくれるのかな。
妙な発見に納得しながら、
隣の客のウナギの香をかいで、残りのお茶をすすってごちそうさま。
暑さはまだまだ、頑張るぞ。
(2014年7月30日)