コンチキチンを聴きながら、
四条通りの雑踏を歩く。
薙刀鉾のあたりは、もう立ち止まることも方向を変えることもできない。
右手で白杖、左手で目が見える友人の肘を持ちながら、
人の流れの中の、一人の人になる。
騒音に近いような音、うだるような暑さ、
決して快適な空間ではないのに、
そこに存在できていることに笑みがこぼれる。
この社会の中に、普通に存在していたい。
見えなくなった時の孤独感は、
その存在に不安を投げかけた。
だからこうして、人波の中にいられることがうれしいのだろう。
烏丸駅から電車に乗ったら、
何人もの浴衣姿があった。
「濃紺の浴衣にピンクの帯、草履の鼻緒もピンク、中学生くらいかな。」
うれしそうに解説してくれる友人の声を聞きながら、
頭の中でコンチキチンが流れ続ける。
見えないとか、見たいとか、そんなレベルではない。
ただ、ここに存在していられることが、ただそれだけで、とっても幸せ。
(2014年7月16日)