夜7時の小学校の教室、
先生方とPTAの人達が集まられた。
約2時間、僕の話に耳を傾けてくださり、
質問も投げかけてくださった。
見えない世界を伝えようとする僕の思いと、
見えない世界を知ろうとする人達のやさしさが、
教室の中で交錯し、
空気は穏やかに変化していった。
ここの校長先生と出会ったのはもう10年前くらいになるだろうか。
それから幾度か、子供たちに、先生方に、PTAの人達に、
伝える機会をつくってくださった。
見えなくなって、たくさんの先生方と知り合った。
子供達への深い愛情、教育者としての信念、そして未来への希望、
いつも素敵だと思う。
僕が子供の時も、
先生方はこんな風に僕を育んでくださったのだと思うと、
やっぱりうれしくなる。
そして、僕達も共に生きていく社会について一緒に考えてくださることに、
心からありがたいことだと感じている。
「今年で定年です。またいつか、どこかで会いましょう。」
握手してくださった校長先生の手がとてもあたたかかった。
見える人も見えない人も見えにくい人も、
共に生きていける社会に向かって、
見えない世界を正しく伝えたい。
見えなくなってから始めた未来への種蒔き、
たくさんの人達の応援の力で随分と頑張ることができた。
未来はまだまだ向こうだけど、
いや、まだまだ向こうだから、
まだまだ頑張らなくちゃと思う。
学校を出て、駅で電車を待つ間、
ふっと空を眺めた。
「見えるようになったら、今何を見たいですか?」
やさしさに満ちた質問に、
僕は、今、空を見たいと思うと答えた。
駅の上には、真っ青な空が見えた。
雲ひとつない青い空だ。
見える人には、夜空が映り星も輝くのだろうが、
僕には想像する空しかない。
でも、本当に美しい澄んだ青い空だった。
見とれてしまうくらいの、青い空だった。
(2014年7月2日)