買い物をすませて店を出たら、
雨がポツポツ落ちてきた。
降水確率50%の今朝の天気予報の数字を思い浮かべながら、
僕は空を眺めた。
傘を持ってこなかったことを後悔しながら、
うらめしそうに、空を眺めた。
その時、おじいさんが話しかけてくださった。
「傘はないのかい?」
僕は照れ笑いをしながら、
「はい。」とだけ答えた。
おじいさんは、僕を傘に入れると、
「こんな雨の日、あんたと歩くには、わしは丁度いいスピードだ。
肘を持ったらいいよ。」
そう言いながら、僕の横に寄り添ってくださった。
僕はおじいさんの肘を持って歩き始めた。
本当にゆっくりゆっくり歩いた。
傘に当たる雨の音を聴きながら、
のんびりのんびり歩いた。
道の方角以外は、何も会話はなかった。
でもなんとなく、相合傘がうれしかった。
団地の入口についた時、
「急いでも、何もいいことはない。」
おじいさんが笑った。
「人生ですか?」
出かかった言葉を飲み込んで、
僕はまた、「はい。」とだけ答えた。
そして、ありがとうございましたと深々と頭を下げた。
(2014年6月12日)