バスを降りて、いつもの家路をたどる。
歩道の側壁を白杖でたどりながら歩く。
ちょうどいい感じの風に吹かれながら歩く。
生い茂り始めた木の葉や草が、
僕の顔や身体をおかまいなしに触る。
突然頭を撫でられたかと思えば、不意にとおせんぼされたりもする。
顔を触られるくらいならまだしも、鼻の中までくすぐったりする。
結構ないたずらっ子だ。
この季節、いたずらっ子達の遊びは日に日に変化していく。
目が見えていれば、
目前の木の枝や葉っぱなど、無意識に避けて歩くだろう。
無意識に避ける時、植物たちの日毎の成長までには気づけない。
「見えなくて、得することもあるよね。」
僕はそっと、爽やかな風にささやく。
きっと、緑が一番美しい季節なのだろう。
そう思った途端、自然に足が止まって、
夜中の西山を眺めた。
頭の中一杯に緑色が広がった。
いつでも見れること、これも得している部分かな。
風に笑いかけながら、
また白杖で歩き始める。
(2014年5月25日)