肢体障碍者の知り合いから、
久しぶりのメールが届いた。
年齢のせいで筋肉が衰え、
松葉杖が大変になってきているとのことだった。
僕が彼と知り合ったのは、
地域の障碍者の集いだっただろうか、
子供の頃からの肢体障害だった彼は、
まだ福祉という単語さえなかった少年時代、
父親が作ってくれた杖を使って歩いていたと教えてくれた。
その言葉には、父親への深い愛情と感謝が溢れていた。
差別や偏見に満ちた社会を生き抜いてきたはずなのに、
彼の言葉も、語り口も柔らかく、
怒りのようなものは何も感じられなかった。
淡々と、彼は生きていた。
見えなくなったばかりで、まだつい俯き加減の僕に、
彼は、人間の尊厳みたいなものを伝えてくれた。
淡々と生きる姿が美しいと思った。
届いた短いメールの最後には、
「お元気でご生活ください。」
と記されていた。
彼らしい美しい言葉だった。
淡々と、僕も生きていきたい。
(2014年5月12日)