休日の予定だったのに、
急に、夜の会議が入った。
重たい気持ちと身体は、なかなか動こうとはしなかった。
若い頃なら、仮病でも使っただろうが、
この年になってやっと、責任感みたいなものも芽生えてきているらしい。
溜息をつきながら、うつむき加減で家を出た。
その流れのせいなのか、バスも電車も、座れることはなかった。
夕方込み始めた駅の構内では、白杖が、幾度も誰かの足に当たった。
僕はその度に謝った。
大宮で電車を降りて、バス停まで移動しようとして、
白杖が、不法駐輪の自転車につかまった。
とうとう動けなくなった。
立ち往生して、白杖であちこち探っている僕に、
若い男性が声をかけてくれた。
バス停まで、わずか30歩くらい、
僕は彼の肘につかまって歩いた。
同じ方向に行くのか確認したら、
彼はまったく違う方向だった。
立ち往生している僕を見つけて、
かけよってくれたのだろう。
たった30歩、僕はその間に、笑顔になった。
バス停の点字ブロックの上に僕を誘導して、
「さようなら。」
彼は僕の肩を、軽く二度叩いた。
頑張れのサインだったと思う。
会議が終了してライトハウスを出たのは20時を過ぎていた。
勿論、帰り着くまで、笑顔で頑張れた。
もう一度若者をやれるなら、
あんな若者になってみたいな。
(2014年4月23日)