桂駅の階段を降りかけたところで、
ご婦人が声をかけてくださった。
行き先は、お互いに河原町までだった。
僕は、彼女のサポートを受け、
電車に乗った。
彼女は空いてる席を見つけて、座らせてくださった。
座るっていいなぁ。
一人の時は、空いてる席を見つけるのは無理だから、
ほとんど立っている。
今日は、のんびりと、くつろぎながら時間が流れた。
電車が河原町駅へ着いて、ホームを階段まで歩きながら、
彼女がささやいた。
「中学校の教師をしていたんです。
勇気を出して声をかけるようにと生徒に言っていたので、
今日は勇気を出しました。」
正直で暖かな言葉だった。
「僕が見えている頃、勇気がなくて、声をかけられませんでした。
こうして見えなくなって、サポートがどんなに有難いか痛感しています。
ありがとうございます。」
僕は感謝を伝え、階段で別れた。
それから、小学校の福祉授業へ向かった。
今日の福祉授業は3時間という長丁場だった。
最後の時間には、保護者の参観もあった。
感想を求められた子供が、
「困っている人を見かけたら、必ず声をかけてお手伝いします。」と宣言した。
それから、心のこもった子供達の合唱の歌声が、
会場を包んだ。
歌声が握手して、肩をたたきあった。
大人も子供もひとつになった。
未来への種蒔き、僕は確信をもって、感謝をこめて学校を後にした。
(2014年1月30日)