湯煙の中を、手引きしてもらって歩く。
素っ裸の男二人、
笑いながら歩く。
見えなくなって行き難くなった場所、
いくつかあるのだろうが、
日常はあまり意識はしていない。
でも、見えなくなって行けなくなった場所はどこですかという質問があった時、
突然温泉を思い出したのは、やっぱり温泉は好きだということなのだろう。
いろんな湯船があったり、段差があったり、
その中を白杖で単独で歩くのは困難だ。
まして、素っ裸の他人がウロウロいると思うと、
白杖が当たったら申し訳ないという気持ちもある。
時々、温泉に行きたいなと思いながら、
指をくわえている現実があるのだ。
露天風呂もあったので、もちろん入った。
冷たい風が心地よい。
忘れていた極楽という単語を思い出す。
57歳になった。
本当の極楽まではもうちょっと時間があるだろう。
今年も頑張ろう。
(2014年1月7日)